開催テーマ

tcworld

私たちテクニカルコミュニケーターは、日頃、商品情報をどのようにユーザーへ伝えるべきか考え、企画し、作成しています。ユーザーが迷うことなく正しく商品を使うことができ、その結果ユーザーの目的がかない、さらに楽しみや満足感を得るところまで到達してほしいと願っています。そのためには、情報をうまく伝え、ユーザーに理解してもらわなければなりません。

■ サッとわからせる見せ方

どのような構成にしたらわかりやすいか、どのような文章表現をしたら伝わるか、などの工夫に加えて、「どのように見せたらわかりやすくなるか」という視点も求められています。
取扱情報を紙面やディスプレーで表現する際、読み手の目線の流れを意識して構成したり、どの情報をテキストあるいはビジュアル化するか検討したり、より読みやすいフォントや行間を選択したりと、見せ方のポイントはたくさんあります。何を記載するかはもちろんのこと、それ以上にどのような見た目の表現にするか創意工夫することで、取扱情報はユーザーにとって、格段に読みやすく、使い方を素早く理解できるものへと変わります。
これらの工夫は、ともするとデザイナーの仕事と思われがちですが、ライターや、ディレクターであればなおさら意識してよい部分です。Communicationの一環として、どのようにしたら情報を人にわかりやすく伝達できるか、総合的に表現を考えるのも、私たちのすべきことではないでしょうか?

■ 直感的に使えるUI

また、最近の製品は、一連の操作を直感的にできるようにインターフェイスが設計されているものが増えてきています。ユーザーがストレスなく製品を使えるためには、製品上で情報をどのように表現すれば直感的操作につながるかを考え工夫するのも、私たちのすべきことになってきています。

今年のシンポジウムでは、効果的表現のひとつである「見た目」に着目。従来型媒体での見せ方はもちろんのこと、新しい媒体についても何かひとつでもアイデアなりノウハウを、ライターやディレクターの方々に持ち帰っていただけるようなものにしたいと思っています。

TCシンポジウム2011プログラム委員長
ソニー(株)
島田 能里子

開催ごあいさつ

TC協会会長 岸 学

一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会
会長

とても重要な文書があったとしましょう。今、その内容をきちんと理解しなければなりません。さて、文書には、文字で書かれた文章部分と文字以外の図表やイラストが描かれていたとします。どちらを先に見ますか?「そりゃ図表だよ。」いえいえ。「まずは文章をきちんと読むでしょ。」いえいえ。実は半々なのです。世の中の半分の人は自分と違う見方をしていると思ってください。
近年、OECDが行っているPISAやPIAACという生徒向け・成人向け読解力調査では、文章と図表やイラストなどの非連続型テキスト(non-continuous text)と呼ばれる情報とをどのように理解するのかが大変重視され、テスト問題として出題されています。実は、21世紀に入る前までは、これらの理解のしかたは十分に研究されていませんでした。最近になって、ようやくいろいろなことがわかってきました。複雑な図を読み取るのは記憶力しだい、紙面のどこから見始めるかは人によりけり、図をまとめるかバラバラにレイアウトするかも人によりけり、自分の知識と図とが食い違うと図を読み取れない、など、いずれも衝撃的です。そして、これらはまさに使用説明(マニュアル)の見た目をどのようにすればよいかの問題に直結してくるのです。
今年のTCシンポジウムのメインテーマは「見た目のチカラ ~サッと探せて、パッとわかって、すぐに使える~」としました。マニュアルの視覚的なわかりやすさ向上にライターの立場から寄与しようという意欲的な試みです。しかし、最近の研究成果を見ていきますと、そう簡単に解決に向かうテーマとはとても思えません。持続的な検討が必須でしょう。だからこそ、今回、まず、参加者の方々からさまざまなお考えを披露していただきたく思います。活発な意見交換を期待しております。

経済産業省 須賀 千鶴

経済産業省商務情報政策局 文化情報関連産業課
課長補佐

このたびは、テクニカルコミュニケーションシンポジウム2011が関係各位の皆様のご尽力により盛大に開催されることに対し、心よりお慶び申し上げます。 また、東日本大震災および福島第一原発事故により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
現在、各種製品やサービスの多様化、高度化が日々進む中、それらを安全かつ効果的に使いこなすためには、適切な使用説明情報が必要不可欠です。また、企業においても政府・自治体においても、ネットワークと連携した情報システムの普及が進み、仕事の効率や生活の利便性を向上するために、文書による説明のわかりやすさを高めることが期待されています。
貴協会におかれましては、1992年に設立されて以来、使用説明技術の向上、専門家の育成、関係者間の人的交流、標準化や国際交流の推進など、多面的な活動を着実に実施されてきております。国民が安心、安全の日常生活を実現するためには、貴協会が継続して取り組んでおられる活動は、大変重要であると考えております。
今回、本シンポジウムにより、参加者の皆様がテクニカルコミュニケーションに触れ、当該知見を深めるきっかけになるよう祈念しております。

結びに、本シンポジウムを通じて貴協会がますます発展されること、よりわかりやすい情報伝達技術の実現に向けた推進力となることを願っております。

実行委員長 和田 祐子

ソニー(株)
クリエイティブセンター コミュニケーションデザイングループ
統括部長

去る3月11日、私たちは未曽有の災害となる東日本大震災を経験しました。この出来事は、世界中の人々の考え方、生活のあり方、そのすべてに影響を与え、価値観さえ変えつつあります。それは私たちテクニカルコミュニケーターにおいても同様で、どのような情報を、どのように伝えるべきなのか、一人ひとりが改めて自問自答するものとなっています。私たちはこの震災の経験をむしろ契機として、変化をとらえ、新たなスタートを切るときが来たのではないでしょうか。そういう意味で、今年のシンポジウムがその機会になるのではないかと思います。
23回目となる今年のシンポジウムのテーマは「見た目のチカラ ~サッと探せて、パッとわかって、すぐに使える~」です。私たちテクニカルコミュニケーターは、お客様によりよく商品を楽しんでいただくために、使用説明の情報を正しく発信しなければいけません。情報は膨大な量で複雑化を増してきています。情報をどのようなロジックで、お客様の「知りたい」に応えていくのか。圧倒的な情報を瞬時に伝える手段として、もはや視覚を抜きにしては語れません。どのように「見せて」いくか、これがこれからのトリセツの肝となります。「読ませる」だけでなく、視覚的、直感的表現方法への工夫が必要になってきているのではないでしょうか。まさに情報デザインと言えるでしょう。
情報デザインにおいて、表現方法をデザイナーだけに任せるのでなく、ライターやディレクターがそれぞれの立場で、視覚的なわかりやすさを創り出すのにどのようにかかわり、寄与できるのか、さまざまな角度から議論していきたいと思っております。
シンポジウム開催にあたりまして、震災の影響により、東京をプレ開催、関西を本開催とし、引き続き弊社が幹事会社として、シンポジウムの今回のテーマについて語り合える場を設けていただきましたことに、TC協会および関係者の皆様に深く感謝する次第です。
震災によって亡くなられた多くの方々に謹んでご冥福を祈りますと共に、被災地の皆様には心よりお見舞い申し上げます。

関西地区代表 木村 雄太郎

(株)島津製作所
CS統括部長

昔、人や物が行き交う要(かなめ)に市(いち)が立ったように、今、TC情報が行き交い、賑わう場にTCシンポジウムが開催されます。そして、今年は『見た目のチカラ』のテーマの元、多様化するTC技術とデザイン技術との熱き交わりが、悠久の歴史がたたずむ文化の京(みやこ)で繰り広げられます。
ご存知のとおり、情報が多ければ安心ですが、たとえば、迷わずゴールに到達するには、右か・左かの簡潔な情報が、都度順番に入手できれば最速です。では、どうすれば"より少なく、より早く、より正確に"と伝えることができるのでしょうか。
またTC情報は多種多様な媒体で発信されますが、受信者は常に人間ですので、人間性の議論を避けて通れません。では、発信側と受信側にどのような責任(ルール)を持たせれば、理解を促進させることができるのでしょうか。
これらの答えや、そのきっかけを、ぜひ、今年のシンポジウムで見つけていただければ幸いです。
誰もが安全かつ簡単に最新の技術を利用することができ、仕事や生活の質を高めることができる社会の実現を目指し、今年で23回目を迎えるTCシンポジウムを"もてなし"の優しさと"にぎわい"の力強さで皆さまにお届けしたいと考えています。

本開催プログラム詳細

TCシンポジウム2011に参加いただくには、入場券が必要です。
入場券は3日間共通で、基調講演、パネルディスカッション、プレゼンテーション、およびtcworldトラックに参加できます。
特別セッションに参加希望の方は、入場券と特別セッション券が必要です。
本プログラムでは、次のような企画について、それぞれの内容をご紹介しています。全体プログラム

基調講演今年の基調講演者は、石黒 浩(いしぐろ ひろし)氏、ファリシテーターは中谷 日出(なかや ひで)氏です。

パネルディスカッション16セッション(1セッション150分)

テクニカルコミュニケーションの旬な話題を幅広く取り上げ、制作プロセスやツールなどに関する最新の技術動向、業界動向などについて討論するセッションです。3名ほどのパネリストが一緒に登壇し、各セッションのテーマに関して、最新の取り組み事例や動向を紹介し、今後の動きや留意点などをディスカッションを通じて浮き彫りにします。コーディネーターは、ディスカッションの進行をコントロールする役割を担います。

特別セッション12セッション(1セッション150分)

ライティング、編集、デザイン、UI関連、制作ツールなど、実務経験豊富な講師による実戦的なセッションです。講師が、テーマ別にスキルや知識を解説し、学習と自己啓発の機会を提供します。ワークショップ形式による特別セッションには、参加者がその場で取り組む実習課題が含まれます。一部は、東京のプレ開催で取り上げたテーマのリピートとなります。参加するためには、ご希望の特別セッションごとに事前にお申し込みください。

協会発表5セッション(1セッション150分)

TC協会が実施している学術研究・産学協同の取り組みや、標準規格策定の取り組みについて、各ワーキンググループなどが成果の発表を行います。ワーキンググループ活動は途中経過の段階にあるため、参加者の皆さんとのディスカッションを通じて、今後の活動に生かしていきます。

プレゼンテーション10セッション(1セッション60分)

商品展示&プレゼンテーションに参加を申し込んだ企業により、使用説明の制作に役立つソリューションやツールを紹介します。紹介されるソリューションやツールは、展示会場において触れてみることもできます。

tcworldtcworld

12セッション(1セッション60分)

tekom(ドイツTC協会)とTC協会の連携により、2011年から実現した新たな企画です。ヨーロッパを中心に活動する国際企業が、自社の技術について研究発表やツール紹介を行います(tcworldトラック)。また、これらの企業は展示会場のtcworldコーナーにおいてブース展示を行い、ツールやソリューションを紹介しています。 tcworldはtekomが保有するブランドネームです。

プレ開催(東京)プログラム詳細

特別セッション11セッション(1セッション150分)

ライティング、編集、デザイン、UI関連、制作ツールなど、実務経験豊富な講師による実戦的なセッションです。講師が、テーマ別にスキルや知識を解説し、学習と自己啓発の機会を提供します。ワークショップ形式による特別セッションには、参加者がその場で取り組む実習課題が含まれます。一部は、東京のプレ開催で取り上げたテーマのリピートとなります。参加するためには、ご希望の特別セッションごとに事前にお申し込みください。