会長挨拶

会長 綿井雅康

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の本格的な展開は、私たちの社会や日々の生活に、大きな変革をもたらしています。テクニカルコミュニケーション(TC)自体もDX化を図ることが求められています。既存の情報をデジタル化することではなく、ITシステムが整備され、多様なメディアやデバイスの利用が可能な環境において、製品・サポート情報を、どのように表現し伝達して、どのように活用してもらうのかを、改めて「デザイン」していく必要に迫られています。DXを実現した情報こそが、社会におけるDXの展開に貢献できるはずです。

 本協会では、TC人材の育成、TC技術の開発と共有、標準規格の策定、海外交流の推進など、テクニカルコミュニケーションの充実と発展に向けて、多面的な取り組みを展開しています。年2回開催されるシンポジウムでは、職種や企業の垣根を越えて、コミュニケーションのデザインやTC技術の拡充のために、参加者による協働的な活動が行われています。

 本協会の取り組みは、最終的には、私たちの「豊かで幸せな生活」の実現に結実するものです。海保博之元会長、岸学前会長の後を引き継ぎ、心理学を専門とする立場から、「人々に幸せをもたらすテクニカルコミュニケーション」の向上に全力で取り組んでいく所存です。どうかよろしくお願い申し上げます。

代表理事挨拶

代表理事 山崎敏正

令和6年(2024年)の活動に向けての代表理事の挨拶
情報をつたえ、つかう技術や表現術と制作管理に寄与する技術を目指して

 長らくバイブル的存在だったISO Guide37が2022年に廃止され、製品・サポート情報の提供を取扱説明書という媒体に限定していた拠り所が消滅しました。今後はIEC/IEEE82079-1が拠り所になります。さらに媒体の製品同梱が非推奨とされる製品分野も増えています。作れば利用者に届くことを当然視してきたこれまでとは異なり、私たちが作成した製品・サポート情報をどうやって利用者に届けるのかに知恵を絞る時代です。

 JTCAは、情報をつくる技術に関わる活動に加えて、マーケティングや組織内コミュニケーションが求められている適切な情報を、最適なタイミングで、必要な対象に情報を届けることを目指した活動を協会の一つの重要な役割とする取り組みとして2024年も継続して展開します。

 そのために夏季開催のシンポジウム2024は、利用者とのコミュニケーションをどのようにデザインするか。この命題に業界関係者と共に取り組む共創環境「コミュニケーションデザインシンポジウム2024」としてオンラインで8月に開催する予定です。秋季開催のシンポジウム2024は、メーカーやベンダー発信の公式情報(エビデンス)としての責務を担う情報製品(IEC/IEEE82079-1が定義)をどう作るか。この命題に業界関係者と共に取り組む共創環境「テクニカルコミュニケーションシンポジウム2024」は10月に京都で対面開催の予定です。次世代の業務の担い手にTC関連業務に役立つコミュニケーション技法を体系的に承継する場でもある両シンポジウム2024で参加者と共に考える場を提供します。

 JTCAは、情報をつくる技術だけでなく、つたえる(伝わる結果を残す)技術、つかう(体験価値に寄与する)技術、そしてより広い領域の人々に「つかってもらう」ための情報発信についてさらに注力していきたいと思います。数年後の理想の製品・サポート情報を含めたあらゆる情報のあり方を会員の皆様と一緒に考えていきましょう。